「研削砥石」とは その2

呼び方

「研削砥石」とは その1 で少し書いたが、研削砥石は回転させて使うもので、英語では「Grinding Wheel」という。「砥石車」とか「回転砥」ともいう、とネット上では見かけるが、何十年か業界にいる私でもそんな呼び方をする人に出会ったことはない。しかし考えてみれば、「砥石」と区別するためには「砥石車」という呼び方は便利かもしれない。

研削砥石とは

 前置きが長かったが、いよいよ研削砥石の定義を述べる。
「研削砥石とは、砥粒、結合剤、気孔の3要素で構成されていて、高速度で回転しながら被研削物を削る、切削工具のこと」である。

たったの3要素

 上記に書いたように、砥石の構成要素はたったの3つである。自分で解説していてちょっと恥ずかしいと思うくらいに少ない。だって、自動車なんて何万点の部品から構成されていると聞くし、おでんだってだいこん、こんにゃく、はんぺん、たまご、、、、3つの要素じゃ作れやしないじゃないか。そのように思う人もいるかもしれないが、実は砥粒も何種類かあり、結合剤(結合方法)も何種類かあり、成型方法により気孔の率もいろいろある。なので、要素はたったの3つだが、これに形状、サイズを掛け合わせると大変な種類の研削砥石が出来るのである。

図1

といし要素図
 この図は、国内研削砥石メーカーさんの複数で使われているので、私も掲載されてもらうことにするが、3要素を説明するには言葉よりこっちのほうがわかりやすい。実際に身近なものでそっくりな構造のものがある。

研削砥石とおこし

 おこしである。おこしを丸い形にすればもう砥石そのものである。回転させたら人の皮くらいなら削れて血が出ると思う。作り方も同じじゃないだろうか? おこしの要素は、米(砕いたもの)、水あめ、しょうが、ゴマなどとなっている。記載はないが、これに気孔がははずせない重要な要素だ。トイシと比較すると、米(砕いたもの)が砥材、水あめが結合剤、それに気孔。そして実は、砥石も3要素以外に生姜や、ゴマに匹敵する添加物が何種類かある。全くおこしと同じである。

気孔と粟おこしと岩おこしと研削砥石と

 おこしには粟おこしと岩おこしがある。いままで知らなかったが、もともとは粟が原料だったのが、江戸時代には米を細かく砕いたものに変わっていったらしい。そして、岩おこしは、粟おこしに較べて米をより細かく砕き、より隙間のないものとなっており、私くらい歳を取ると歯やあごの負担が気になるくらい硬い。なので最近は粟おこしをお土産に良く買う。研削砥石もまさにこれがあてはまるわけで、米か粟か(砥材の種類)、その粒の大きさ(粒度)、水あめの量(結合剤の量)、隙間(気孔)をどれくらい含ませるか、でおおよその性格を変えることが出来るのである。
おこしは、使い方によっては研削用途にも使えるかもしれないが、研削砥石の仲間には入らない。たぶん。
20160325