人造研磨材のいろいろ 

文明の進歩と共に、研削、研磨の性能の要求が高まるのに合わせたように、1890年代から人造研磨材が発明されるようになった。ここでは、現在の工業用の主流である4種類の研磨材を紹介する。

1. 炭化珪素

 シリコンカーバイド(Silicon Carbide)、化学式 SiC。 とっても硬い。地球上でダイヤモンドの次、2番目に硬い、いや、現在では3番目になった。 1881年にアメリカのG.E.アチソンさんが人工ダイヤ製造の研究中に偶然出来たものを、自分が設立したカーボランダム社から1895年に販売を開始した。だから、この材料は、カーボランダムとも言われる。砥石の表記ではたんに「C」と書き、我々は「C砥粒」と呼ぶ。 カーボランダム社は1996年にフランスのサン・ゴバン社に移譲され、2010年にはアメリカのクアーズテック社に譲渡されている。 この炭化珪素という研磨材は実は鉄系のものを削るのには不向きであった。鉄も削れる人造の研磨材の出現はほんのちょっと後になる。

2.酸化アルミニウム

 (Alminium Oxide)、化学式Ai2O3。かなり硬い。先の炭化珪素に次ぐ、ざっくり、地球上4位の硬さ。1897年、アメリカ人のC.B.ヤコブさんが人造のコランダム(鋼玉ともよばれる)を発明し、ノートン社がアランダムという名称で販売した。 これは、鉄を含む素材を研削、研磨に適している。ノートンカンパニーは現在はサン・ゴバンのアブレイシブ事業部に属している。
 一般砥石は上記2つの研磨材を使っているものが殆ど100%といってよいだろう。その材料のどちらもアメリカが作り出しているということに、日本とアメリカの産業力の違いを感じてしまう。

3. ダイヤモンド

 (Diamond)、化学式C。 地球上で一番硬いとされている。しかも飛びぬけて硬い(鉱物、及び研磨材の硬さについてはいろいろ難しいので別の機会に譲る)。地球内部の高温高圧の元でしか生成されず、産出量が限られているので、周知の通り非常に高価な宝飾品となっている。天然ダイヤも研磨材として使われているが、1950年代にアメリカのGE社(ゼネラルエレクトリック社)などがダイヤモンドの合成に成功して以来、工業用としては人造(合成)ダイヤが使われるようになって、現在に至っている。この人造ダイヤは硬さをコントロール出来るようで、天然のダイヤより硬くすることも、脆くすることも可能であり、すでに様々な種類の人造ダイヤが製品化され、砥石として使われている。価格も天然のダイヤとは比較にならないくらい安くなり、金の1/10程度だそうだ。
 宝飾品レベルのダイヤを合成することは技術的には何の問題もないそうだが、その昔、ユダヤ人が築いたダイヤ流通業界は閉鎖的で政治も絡んでいるために人造ダイヤが宝飾品として流通することは阻止されて来た、とどこかで読んだ記憶がある。しかし、近年、人造ダイヤが宝飾業界にも進出してきており、ウェブ販売などて猛威を振るっているらしい。 話は戻るがこのダイヤモンド、鉄を削ることは苦手である。 鉄がダイヤのC(炭素)を吸着するため消耗が早い上に、摩擦熱が800度を超えると硬度も落ちてしまうからである。というか、ダイヤは800度で炭になって消滅してしまう。火事でも燃えてなくなる。タバコを吸っている最中の明るい火の色の時とだいたい同じである。 ダイヤモンドはタバコの火には近づけないようにしたい。

4.CBN

 立方晶窒化ホウ素、cBN。 ダイヤの合成に成功したアメリカのGE社(ゼネラルエレクトリック社)が開発。1969年にボラゾンという名前で販売したので、CBNのことをボラゾンと言ったりもする。ヤマハの電子オルガンをエレクトーンと言うが、電子オルガン全般をエレクトーンと呼んでいる人は多い。ちなみにカワイの電子オルガンはドリマトーンである。弱い。 このボラゾン、見事にダイヤの欠点を補っており、硬度こそ、地球2番目の硬さに甘んじるが、耐熱温度も1,000度以上あり、鉄の研削で炭素が吸着されることもない。 ダイヤモンドとCBNでGE(ゼネラルエレクトリック)社、ひいてはアメリカはどんだけ利益を上げているのだろうか、、、、。
トランプさん、仲良くしてくださいね。
20160518