研磨材のいろいろ

研磨材とはものを削ったり磨いたりするための材料のことである。
 約120年前に人間が人工的に作り出したカーボランダムという研磨材にはじまり、人造の研磨材には、アランダム、人造ダイヤ、セラミックなどがある。人造の研磨材が開発されるまでの昔は、山から採取される天然の砥石、天然のダイヤ、ガーネット、ルビー、エメリー、コランダムなどがある。これらの鉱物は宝石として珍重されるものもあるが、天然に存在するものの中では硬いほうなので、研磨材としても使われていたし、現在も使われている。宝飾品に使われる天然石の大きさから較べたら、研磨材に使う天然石はゴミのように小さい、粒、粉、という表現が適当なので、さほど高価なものではない(但し、クズ扱いでも、天然のダイヤはやっぱり高い)。
 複雑な形状のものを隅々まで研磨したい場合に使う、バレル研磨とか、ブラスト研磨という研磨方法では、ガラスビーズ、鉄球、などの無機物や、クルミ、コーン、桃、杏などの有機物(もちろん、生ではない、乾燥させて粒状にしてある)や、メラミンなどのプラスチック片をなどを使うが、これらも研磨材ということになる。
 ガラスの研磨には酸化セリウムという物質を使う。通常、研磨といえば物理的(機械的)に削り取ることだが、酸化セリウムでの研磨は化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)といって、物理的な研磨に加えて、化学的反応も利用しての研磨となる。セリウムの粒子の大きさは1.8ミクロンから0.5ミクロンくらいで用途によって使い分けるようだ。
また、歯磨き粉には炭酸カルシウムや、リン酸カルシウムといったものが含まれているものが多い。
「ホワイトニング効果」などと書かれているものは研磨材が入っており、歯の表面を削って白くするという理屈である。これには歯が削れてしまって知覚過敏などの原因になるという意見もあるが、歯は再石灰化するので心配ないという意見もある。砥石屋の見解としては、歯の硬さを7とすると、炭酸カルシウムなどは硬さ1程度なので、そんな柔らかい材料で歯が削られることはないだろうと思う。但し、電動歯ブラシを使い、長時間磨き続けると多少は削れるかもしれない。また、歯の根元の象牙質の部分を電動歯ブラシで擦ると何かしら影響があるかもしれない。ちなみに私は、手動歯ブラシに歯磨き粉は付けないで歯を磨く。十分綺麗になっていると思う。
 それから、私も知らなかったが、「トクサ」という植物がある。「砥草」と書くらしく、これは、茎が紙やすりのように使えるらしく、ツゲの櫛や、漆器の磨きや木管楽器のリードの調整などに欠かせないし、爪を磨くのにも使われていたらしい。これも研磨材であろう。
 次回は人造研磨材について書きます。
20160502